住職日記

「長谷寺の住職は現在35世代目。歴史ある寺を守ること、そこから仏教を発信すること、そこが地域に開かれた場となること。課題も夢も山積み。そんな住職の日々と思いをつづります。」

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シャチ

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先日、鴨川シーワールドに行った。8年ぶりくらいだろうか。

女房様の絵解きが当地の宗派の青年会によって企画されたので、またまた私はマネージャー権運転手として子供たちまで連れて随行。お寺が忙しかった夏の間、子どもらには夏休みらしい夏休みもないから、これを良い機会にちょっと遅れた夏休み。

車で一路安房の国へ。

少し早めに出てフェリーで東京湾を渡ることに。

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山国の人間には、海というのは、本当に何というか、「わあ海だあ」であります。

娘と京都に行った。一泊の小旅行である。といっても、所用によるのだが。

用を済ませて、ネットで予約した某ホテルへチェックイン。

(ネット予約というのは、どうしてこんなに安くなるのだろうか)

地下駐車場に車を停めてエレベータでフロントへ。

渋い佇まいのロビーは重厚な雰囲気が漂っている。西洋人が溶け込む空間構成に、日本の京都のホテルにいながら、日本人らしく緊張する。

そんな雰囲気にはお構いなしの娘は、いつものようにお人形のメルちゃんと連れ立って浮き浮きとついてくる。

「いらっしゃいませ」

「予約していたオカザワです」

「オカザワ様、お待ちしておりました」(不自然なほど、自然に聞こえる)

娘がカウンターによじ登ろうとする。カウンターの前に設置してある荷物置きようの台に登ってしまった。

「これ、じっとしてなさい、せめて靴を脱げ」(と、重厚なロビーに響かないように小声で注意)

「オカザワ様、本日よりご一泊、お二人様でございますね」

はい、と応答しようとした私より先に娘が答えた。

長野では数少ないプロ野球の公式戦。パ・リーグのライオンズ対マリーンズ戦が、篠ノ井のオリンピックスタジアムで行われた。

この春から息子が野球を始めたので、凄い人たちのスーパープレーを見せてやりたいと思って、家族で出かけた。

息子と僕は、きちんとグラブを持って出かけた。法事に数珠を忘れないのと同様、野球観戦にはグラブは欠かせない。

息子のグラブは、先月、メジャーリーグ入りの野望への第一歩として買い求めた『イチローモデル』のカッコいいグラブだ。

前夜には、映画『メジャーリーグ』も予習のために観た。

ピン、と来る瞬間というものがある。

予感だ。

今日もそれが的中した。

法事の後の席で食事をご馳走になっていた時のことである。

もうお蕎麦も出で、斉食も終わりだったが、会場の部屋の内線が鳴っていた。

ピン、と来た。

お店の仲居さんが受話器を取り何やら受け答えしたかと思うと、振り向いて僕を見た。

そして、アイコンタクトと右手で受話器を指差した。

この春から、息子は地元の少年野球チーム「イナズマドラゴンズ(略してイナドラ)」に入団した。

ルーキーである。

息子は燃えている。友達やチームのコーチである父兄の熱心なお誘いを受けて仲間に入れてもらったわけだが、以前は「サッカーやりたい」と言っていたのが嘘のような勢いで、毎週土日の練習や試合を心待ちにしている。

夕方になれば、キャッチボールをせがみ、僕が暇そうにしていると「バッティングセンター」に行きたいと言う。

何がそんなに彼をひきつけたか、ベースボールの女神さまが、どうも10歳の少年にウィンクしてしまったと思われる。

息子とヨモギとりをした。全国的なこととは思えないが、この季節、私の母校でもある塩崎小学校では全校児童がヨモギを取って持ち寄り、それを業者に買い取ってもらって現金化し、体育館のボールを買ったり楽器を買ったりした。

子供の頃、近所の子供たちと連れ立って裏山の「猪ノ平」までヨモギを摘みに行った。

大きな袋を満タンにするまでとりまくった。翌日、サンタクロースのような子供らが方々から登校してくる。

中には10キロにも及ぶヨモギをとって、親が軽トラックで運んだりしていた。

次第にヨモギ取りにも熱が入り、学校帰りには競争で「産地」を求めた。学校から近い子供たちは、帰宅するや自転車でヨモギ取りに散り掛かる。

しかし、僕らのように片道30分も歩くような子供らは実に不利だった。

まだランドセルを背負って歩いている僕らの横を、自転車に乗った友達がヨモギ取りの袋を持って収穫に向う。

悔しいので、むやみに早起きしてあちこち取りにいった。

そうやって収穫し持ち寄ったヨモギを、体育館の秤で重さを測るのが楽しみになる。

楽しみにしている間は可愛いが、重さに対する執着が生じてエスカレートしてくる。

子供なりに悪知恵を働かせヨモギを摘むのに茎のほうから葉っぱもたくさん摘んで混ぜたり(本来は頭の部分しか商品にならないと後で知った)、登校直前にスプレーで水を大量に含ませて重さを稼いだ。

かなりズルイことをしているという自覚もあったが、「多いほうがいい」「重いほうがいい」という、まさに高度成長期の児童らしく数字だけを目指していた。

昨日、10歳になる息子が、初めてちょっとした一人旅をした。

といっても、電車に乗って降りるだけのことであるから、たいしたことはないと言えばたいしたこともないのだが、長野駅から特急に乗って名古屋までの約3時間、一人で行ったのだから、彼にとってはそれなりに胸の高鳴る体験で、大きくなってからも覚えている出来事になるだろう。

2008年9月

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