お寺のお正月 その三

迎える元旦の朝は、睡眠時間1時間半。
体が温まる前に起きるので、しばらく歯がガチガチ鳴るほど体の芯が冷え切っています。
さっき、「おやすみなさい」と別れたばかりの泊まりのスタッフさんたちが、「おはようございます・・・」と朝食に集まって来られます。

本当にありがたいことに、毎年大晦日に手作りのおせち料理を届けてくださる方があるのです(涙)。
そのおせちを一人分ずつのお皿に盛り分けて、あとは炊きたてのご飯と湯気の立つお味噌汁。
おめでたい柄の小皿を使います。

長谷寺の元旦の朝ごはん

住職が「明けましておめでとうございます。お参りの方をあたたかくお迎えしてください。よろしくお願いします。」と食前の挨拶をし、皆でおせちに感謝して、今年最初の食事をありがたく頂きます。ひとつひとつ思いをこめて作って下さったおせちが、じんわりお腹にしみていきます。

さあ、元気100倍!みんなピシッと作務衣と輪袈裟をつけ、それぞれの持ち場に向かいます。

普段なら寝不足でヨレヨレになりそうですが、初詣に来られる方々の晴れやかなお顔を見ていると、「今、目の前のこの方のために!」と体の奥底から力がみなぎってきて、1日7座の護摩祈祷をする住職たちも私たちも、不思議に日中全く疲れを感じないのです。

住職による護摩祈祷
お護摩の火が生きもののように
御札に吸いついてきます

御守売り場を担当してくれる女の子たちにも、毎年必ず大切なことをお伝えします。
「長谷寺に初詣に来て下さる方たちは、皆さん、今年がよい1年であるようにと願って、寒い中でも雪の中でも来て下さいます。願いごとを抱えて、御守を一生懸命選んで行かれます。ですから、目の前のこの方にとって長谷寺での今日が、そして今年が、どうぞよいものでありますように!と願って、笑顔で大切に接して下さいね」
みんな本当にいい子たちで、可愛い笑顔で誠実に一生懸命対応してくれました。

また、今年のお正月は、とても嬉しいことがありました。
お正月としては初めて、地元の長谷太神楽保存会の有志の方たちが、御神楽の奉納をして下さったのです。
雪の多いお正月でしたのに、この日は快晴!
新しく生まれたような光が、境内にキラキラと降り注いでいました。

観音様に向かって奉納

「御神楽だって!」お参りの方たちがわーっと集まり、拍手がおこります。

新しい年を寿ぐ笛や太鼓とお獅子

代々太神楽を受け継いで来られた熟練の方から、中学生の期待の若手まで、保存会の方たちが皆で、古い伝統を誇るこの長谷太神楽を今日まで大切に守ってこられました。長谷寺という古くからの祈りの場で、お正月の光の中で、祈りと祝いの御神楽を目の前にしていると、「きっといい年になる」という思いが沸き上がってきます。

新しい年を寿ぐ笛や太鼓が境内に響き、お獅子の勇壮で美しい動きに歓声が上がります。

奉納の後、笛や太鼓が鳴る中、お獅子が右と左にわかれて参道を歩きはじめると、「獅子に頭をかんでもらっていいですか!?」「近くまで行ってもいいですか!?」と聞きながら、お参りの方たちがお獅子に駆け寄っていきました。抱っこしたお子さんをお獅子に差し出す方も。もちろん、私もかんでもらいました!

お獅子に頭を
かんでもらう方たち

「今日来てよかったね~!」「すごくありがたかった!」と嬉しさがあふれるような皆さまのお顔を見ていると、ふと涙が出そうになりました。

実は私は、受付の中からそっと、御祈祷を終えて帰られる方たちの様子を見るのが好きです。皆さん、ご自身では気づいていらっしゃらないかもしれませんが、来られた時とは足取りまで違うのですから。
本当に晴れやかな、輝くような明るいお顔で帰られるのです。
ご本人に見せてさしあげたいくらい。
お正月の御祈祷は、お迎えするこちらまで幸せになる行事です。
どうぞよい年になりますように・・・。
そっと祈るお正月の日々です。

こうしてお正月行事は、元旦から5日までの初詣の御祈祷、7日の夜の七草詣で、成人の日と前日の厄除け大祭、数日間の御年始回り、16日の御年始受け、と続き、1月17・18日の初観音で、ついに全て終了となるのです。

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