こんなうたを詠んだ人がある。 南無とする 南無ともならぬ此の世ゆえ 南無とかせねば 南無ともならぬ 戯れ歌、ではない。 南無、といいながら、かたっ苦しくもない。 間もなく、小雪の候。 風はにわかに冷たくなってきた。 庫裏の玄関の前にあるモミジが赤々と染まり、朝日に照り映えて白壁が赤く染まるほどだ。 でも、明日には散っていくことだろう。 朝、鐘撞き堂に立つと、ついこの間まで視界を遮っていたケヤキや桜の葉が散ったせいで、木々が透けて視界が広くなっている。 きっと鐘の音も遠くまで聞こえることだろう。