住職日記

冬至の頃の贈り物 


その昔、中国では冬至を太陽運行の起点と考え尊い日として祝いました。


  

古代中国の皇帝は、その天の運行を司る能力を天命によって授かるものであり、その神聖な力に則って暦を作りました。


 


周辺の朝貢国は、冬至の頃に「冬至使」という使者を送り皇帝に貢物を献上しましたが、この時の返礼の品として、何にもまして最も重要だったのが暦だったのです。


 


農耕を中心に生きる人々にとって、正しい暦は生死を分ける道標ですから、周辺の国々はこぞって暦を求め冬至使を送ったといいます。


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冬至は、暦の起点として神聖なばかりでなく、日照時間が短くなり最も弱まった太陽が、その日を極として再生してくる日でもあり、太古から天地の運行に従って生きてきた人類にとっては特別神聖な日だったのです。


  


世界各地に冬至の頃に聖者が訪ねてきて贈り物を届ける話が伝えられています。


 


日本にはこの時期に、昔話「笠地蔵」で知られるようにお地蔵さまとか弘法大師が贈り物を届けてくれる伝承がありますし、西洋ではイエス=キリストという最大の贈り物が神様から届けられるのがこの冬至の季節ですね。


 


お地蔵さまや弘法大師のような聖者が贈り物をくださったり、世界に愛をもたらすイエスの誕生がこの季節とされたりするのは、太陽の力が蘇えり天地が命に恵み(慈愛)を与えてくれることを強く実感できるからなのでしょう。


 


この一年も自然災害が続き、天候も不順でした。東日本大震災のころから、便利さや効率重視のライフスタイルを見直す機運が高まりを見せていますし、自然との共生も語られます。


 


しかし自然の厳しさを思えば、共生というより自然の中に生きる存在として、人間や自分自身を見直す必要がありますね。


 


今年の冬至には、改めて暦を見直してみてはいかがでしょうか。


 


きっと天地から与えられる慈愛が感じられますよ。


 

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(明日香岡本寺「葉書法話」寄稿訂正加筆)



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