住職日記

あの世とこの世に笑顔を

ある檀家さんとおてらおやつクラブ

長谷寺では、おてらおやつクラブの活動に参加し、檀信徒の皆さまの供養の「お供え」を「おさがり」として、ひとり親家庭のお子さんや、支援を必要とするご家庭へと、支援団体を通じて「おすそわけ」しています。

おそなえのおさがりを、いざ、おすそわけ

この活動に共感する檀信徒さんの中には、最初から「お子さんたちに送りたい品物」を考えて用意し、ご本尊さまやご先祖様の供養にとお供えしてくださる方もいます。

そんなお一人であるMさんは、この春先に、大切なお母さんを亡くされました。お寺の「おてらおやつクラブ」の取り組みを、生前のお母さんとともに興味深く思っていたとのことで、亡くなる前にもお母さんが「いつか何かしたいね」と、話していたのを覚えているそうです。

そのうちに何かお菓子でもお供えしようと思っているうちに、お母さんが急にお体を悪くされ、急ぎ旅立ってしまいました。とても仲良しの親子で、私もしばしば二人がお墓参りをしたり、お墓のお掃除をしている姿を見ることもあって、お葬式の時も、Mさんのお母さんへの想いに深く打たれました。

そんなMさんが、お母さんの四十九日の法要の時、「ねえ、ご住職、おやつクラブのことなんだけどさ」と、いろいろ尋ねてくれました。Mさんは、小さな子供が大好きだった母を思い出すと、これからを生きる子供の力になれるようなことが出来たら、それは良い供養になるのではないか、と考えたそうです。

ちょうどそのタイミングで、長谷寺は「おてらおやつクラブ」を通じて、地域でひとり親家庭や病児保育のご家庭の支援をしている団体「えんまる」さんと連携を始めていたので、私はMさんの願いにピッタリではないかな、と思ってお話をしました。

すると、それ以来、毎月というわけではありませんが、亡きお母さんの「月命日」になると、Mさんはお寺に「これ、お供え」と言って届けてくれるようになったのです。

その供養の品は、お菓子だったり、カップ麺だったり、鉛筆だったり、まるでお母さんの目線になって、子供に必要なもの、あるいは子供とその親御さんが喜びそうなものがチョイスされています。先ごろは、子供の日、あるいは新学期だから、ということで、かわいらしい色鉛筆とスケッチブックのセットが、お供えされました。

ひとり親のご家庭の中には、日々の暮らしに追われて、子供の日とか、ひな祭りとか、ハロウィーンとか、クリスマスなどのお楽しみに心やお金を向ける機会がなく、さみしく過ごすご家庭もあります。また学用品についても、今の学校はいろいろと用意しなくてはならないものが多く、それらの必需品で費用がかさみ、お絵かきをしたりする文具を新品で用意するのが困難な場合も少なくありません。

そういう事情にもMさんは心を寄せ、「ご住職、その団体さんが支えておられるお子さんは何人くらい?」と事前に聞いてくれ、その人数分の「お絵描きセット」をお供えしてくれたのです。

きっと亡きお母さんも、息子のそんな気持ちを本当に喜んでいるに違いありません。笑顔のかわいらしかったMさんのお母さんですが、この「お絵描きセット」を手にするお子さんたちの笑顔も、きっと輝いていることでしょう。そして、そんな供養を喜びとして亡き母に手を合わせ、子供たちの幸せを祈るMさんの笑顔も、本当に素晴らしいものであると思います。

おらておやつクラブの活動は、そんなふうにして、あの世とこの世に笑顔を広げ、人生に新たな喜びを見出す取り組みです。

お寺を通じてお届けするので、支援団体さんや受け取られるご家庭から、お寺あてに感謝の言葉が届けられることもありますが、その「ありがとう」は、ほかでもない、お供えくださるMさんをはじめ、お菓子やお米や文具などをお供えくださる檀信徒さん皆さんにこそお届けしたいと思います。

おそなえを箱に納める前に


皆さん、本当にありがとうございます!!!!!

おてらおやつクラブ

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