住職日記

「長谷寺の住職は現在35世代目。歴史ある寺を守ること、そこから仏教を発信すること、そこが地域に開かれた場となること。課題も夢も山積み。そんな住職の日々と思いをつづります。」

お釈迦さま涅槃図のお絵解きのお知らせ

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長谷寺お釈迦さま涅槃図の絵解き

~お釈迦さま最後の旅~

315日(

      1回目 午前10:00~

      2回目 午後14:00~

      長谷寺 庫裏

長谷寺ではお釈迦さまの命日(やしょうま)に当たり寺宝「大涅槃図(ねはんず)」を公開しお絵解きをします。仏教の祖、お釈迦さまの最期の様子が描く涅槃図の絵解きは、お釈迦さまが80年のご生涯を通じて、お釈迦さまが何を求め、何を伝えたのかを物語ります。長谷寺の寺宝「大涅槃図」のお絵解きで、お釈迦さま最期の旅路を一緒にたどりましょう。



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涅槃図 御釈迦さま入滅の物語


凍結された光景・・・・。

仏陀の死の光景が、一枚の絵に氷結している。

「その場」に居合わすことの出来なかった人々は、

すなわち遅参者である私たちは、

遥か遠くの凍りついた仏陀に

暖かな憧憬を寄せて南無釈迦牟尼仏と称えるばかり。

しかしその暖かな想いと言葉によって、

いつしか氷が解けて雫がこぼれだすように、

仏陀の温もりが私たちに染み込んでくる。

凍りついた光景を想いと言葉によって溶(解)かす。

絵解き、という言葉がもっとも似合う絵が、

仏涅槃図ではないだろうか。




■涅槃図 仏伝文学の中のクライマックス

仏教の祖、釈尊が、クシナガラの跋提河(ばつだいが)のほとり娑羅双樹の間に入滅する様子を描いたもので、釈尊の生涯を伝える仏伝文学の中でも重要な場面である。


釈尊は、今から二千五百年ほど昔、インドの北西部に存在した釈迦族の王子として生まれ、二十九才で出家し、三十五才で悟りを開いたと伝えられている。その教えは「人間の生きるべき道」「輪廻からの解脱の法」を明らかにしたもので、悟りを開いて亡くなるまでの四十五年間にわたって、釈尊はその教えを説き続けた。その間の様子を前世から誕生、成道(悟り)、布教の旅、そして入滅など、釈尊の生涯の重要な場面を取り上げて細かく伝える「仏伝」が伝えられているが、それらはインドでも早い時期からストゥーパ(仏塔)のレリーフなどで表されていた。難しい経典の内容よりも、釈尊その人の生涯を通じて人々は仏教に親しんできたのだろう。中でも釈尊の死の場面を表す「涅槃図」は仏伝文学の中でも独立したテーマとなり、仏教が伝えられたアジア全土でくまなく親しまれてきた。

 

■デス・エドゥケーション(死の学び)としての涅槃会

日本においても寺院において「涅槃会」が早くから行なわれてきた。そこで用いられてきた涅槃図には重要文化財などの優れたものも少なくないが、そうした中央のものとは別に、地方寺院でも涅槃会は盛んに行なわれ、今日でも多くの寺院に涅槃図が残されている。また地方寺院における涅槃会は中央の厳粛なものとは違い、地域住民が娯楽もかねて参加するもので、その日のお供え(信州では「やしょうま・涅槃団子」)が目当てで子供たちが寺に集まった。

その際、簡単な法要とともに、人々に対して涅槃図の絵解きが行なわれたのである。その絵解きは寺の住職がする場合もあったし、例年絵解きに親しんできた地域の古老が担当することもあった。人々は、釈尊の死の光景を語り聞かされ、そこから仏教の死生観に馴れ親しみ、それを身につけていった。長寿を全うし、親しい人々に囲まれて死んでいく釈尊の死は、日本人にとっての死に方の理想的なモデルでもあり、涅槃会は今日いうところの「デス・エデュケーション(死の学び)」そのものであった。


■涅槃図に描かれるもの

縮される涅槃の物語(情報)を解凍する絵解き

涅槃図において、釈尊は娑羅双樹の間に頭を北にして横たわり、その周囲を弟子や諸菩薩、神々が取り囲み嘆いている。さらに修行者や在家の信徒、多数の動物や昆虫類などがかけつけ、天には釈尊を産んで七日で亡くなったという母マーヤー夫人が描かれる。

また哀しみのあまり悶絶して地に伏した愛弟子のアーナンダ、枕元で最期の別れを告げる実子ラーフラ、釈尊の足に触れるヴァイシャーリーの老婆、天から飛来する実母マーヤー夫人、激しく取り乱す金剛力士など、入滅にあたって特徴的なエピソードを残した群像は、多くの場合に一見してそれと分かるように描き込まれている。

それらの様子は、どれかひとつの経典や仏伝に取材したわけではなく、多数の涅槃系経典や仏伝文学、あるいは民間伝承などから、縦横無尽に取材されている。したがって、涅槃図を描き、またその絵解きの台本の原型となるものを編集制作した人々は、膨大な涅槃に関する情報を収集したものと思われる。

そうして集められた膨大な情報を、一枚の絵に凝縮し圧縮する。そしてこの凝縮され圧縮された膨大な釈尊の涅槃の物語は「絵解き」というスイッチが入ったとたんに、あたかも圧縮された情報が解け出すように、こんこんと水が湧き出るようにセットされている。

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