住職日記

「長谷寺の住職は現在35世代目。歴史ある寺を守ること、そこから仏教を発信すること、そこが地域に開かれた場となること。課題も夢も山積み。そんな住職の日々と思いをつづります。」

母なる大地が「大丈夫」と教えてくれる慈悲の心

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奈良桜井の長谷観音。

この寺のご本尊十一面観世音菩薩様は、少々変わった姿をしておられるます。

ご存知のように長谷観音様は右の御手に錫杖を持っておられます。

ふつう、十一面観音様は錫杖を持ちません。

仏様の持ち物は、その仏様の徳を示すものです。

では、長谷観音様の錫杖は、どんな徳を示しているのでしょうか?




仏様で錫杖といえば、お地蔵様のシンボルです。

ですから、長谷観音様はお地蔵様の徳をも備えている、さらには観音地蔵一体とも称えられています。

日本人の観音信仰と、地蔵信仰とが長谷という霊場で結晶して現れた真に尊いお姿といえましょう。


ところでお地蔵様はその名の通り、大地の蔵、すなわちこの母なる大地の徳、今日で言うなら地球そのものを仏格化したお方です。

仏教の中で大地といえば、思い出されるのは釈尊の降魔成道すなわちお悟りの時、その悟りを阻もうと迫り来る悪魔の軍勢を退ける際に、大地の女神が現れて「仏法は正しい」と証明する場面です。

仏法は、釈尊が自分勝手に「私は正しい」と主張するものではなく、大地がその正しさを保証してくれたのですね。

もはや悪魔も退くほかはありません。

同じように観音経でも、お釈迦様が観音の徳を説き明かすと、持地菩薩という大地の菩薩が「観音の慈悲の力は素晴らしい」と称え、人々に勧める場面があります。

いずれも、大地の名において、仏法や慈悲が讃えられ保証されています。

母なる大地や地球が「いいね!」と認めてくれるのですから、それはもう大いに安心して、また誇りを持って仏道を歩みたいものです。


こうして考えると長谷観音様の「ちょっと変わった姿」も、観音様の慈悲の働きは、母なる大地に根ざす普遍的な心であることを示すものなのでしょう。

揺れ動く世の中に生きる私たちにとって、揺るぎない大地が「これなら大丈夫」と太鼓判を捺してくれるなら何より安心です。

これからも、慈悲の心を大切にしてまいりましょう。                          

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